ゆりかごから墓場まで〜一生オタク〜

節操のない雑食オタクの雑記です。時々コスメやお洋服の話もします。

グローバル化するKPOPと、ポリティカルコレクトネス

なんだか仰々しいタイトルをつけてしまったけれど、今回は久しぶりに真面目な記事を書いてみようと思う。今回の話題は主として、「人種差別」とKPOPというセンシティブな話題について扱う。なのでこういった話を避けたい方はUターンして頂ければと思います。

また、実際にいくつかの例に触れるにあたり、登場する実在のグループや個人の名前をあまりにもあからさまにすると、本人たちにいらぬ危害やイメージの悪化を与えてしまう恐れがあると判断したため、伏字を今回は多く使って記事を書きたいと思います。ご了承いただけると幸いです。

 

では早速、本題に入るに至り、私がなぜこの記事を書こうと思い立ったかを説明したい。私はもともと、人生の一時期において政治学というものに非常に興味を持っていた。特にその中で興味深いと感じたトピックの一つが「ポリティカルコレクトネス」という単語である。あまり馴染みのない人も多いかもしれないが、アメリカなどを中心に人種差別問題などと並べて語られることが多く、簡単に言えば「正しいとされる政治的主張」を気にしすぎることは果たして良いのか否か。といったような内容である。

より具体的に話すとすれば、例えば「アメリカの現大統領が人種差別主義者」だというイメージが世間に流布していると仮定する。すると、「X大統領を支持する」という政治的主張は、ポリティカルコレクトネスに反している、という考えが生まれ、仮に一個人がX大統領を別の政策的観点(例えば経済政策など)の理由から支持していたとしても、「世間の風潮」によってそれを表明したら魔女狩りにあってしまう、ような感じである。

このポリティカルコレクトネスについての議論は、政界のみならず、エンターテインメントの世界でもしばしば議題になることが増えた。例えば、アカデミー賞でいわゆる性的マイノリティや、民族的マイノリティなどを扱った作品が大賞を受賞するようになったのは、「マイノリティに対する過剰なまでの配慮=ポリティカルコレクトネス」が働いていることが原因だとする主張である。(今私があげた二つはあくまで例であり、これは私個人の主張とは無関係だと先に述べておく)

 

こういったポリティカルコレクトネスの考え方は、程度問題さえあれど、どこの国や文化にもおそらく存在しているように個人的には思う。ただ、ポリティカルコレクトネスという言葉や話題に出される頻度、どの程度「重要視」されているかは、やはり個々の国の文化的歴史的背景によって異なっているとも私は思う。誤解を恐れずに言えば、様々な民族がいりまじり、移民問題や人種問題が日々議論される機会の多い北米や欧州と比べると、比較的単一民族で、均質な文化的イメージを持っているような韓国や日本では、こういった話があまりされていないように思う。

 

そして、この「ポリティカルコレクトネス」に対する認識の差が、昨今のKPOPで特定のアイドルが炎上する騒ぎの原因になっているように感じるのだ。

我々日本人が外国人であるのと同じように、KPOPというものは昔から韓国市場だけでなく世界へ輸出することを目的として作られているのは、韓国という国の音楽市場の規模の小ささからいって自明の事実であるように思う。特にBTSを皮切りとして最近の多くのグループの欧米進出の加速は、KPOPのファンダムを成長させると共に、おそらく韓国の事務所、所属タレントが想定していなかった規模の海外ファンを作り出すことになった。

だがしかし、地理的にも近く割かし共通点を発見しやすかったであろう日本のファンダムとは違い(もちろん反日騒動とかでもめるのはあるけど)、欧米のファンを相手にし始めてはじめて、発言などに対して「ポリティカルコレクトネス」を突然要求され炎上するアイドルという流れを散見するようになった。

以下、私が最近耳にしたいくつかの例をあげる。 

 

ケース1 某サバイバル番組 日本人練習生の過去の発言

現在行われているアイドルグループ誕生のサバイバル番組に出演しているある練習生(Aとする)のおそらく練習生になる前の個人SNSアカウントの記録が流され、その中で「(原宿にいる)黒人に絡まれたら○○(おそらく友人の名前)出せば大丈夫!」

というリプライが問題視された、というもの。海外の一部のファンから「アフリカ系民族に対する人種差別だ」との声が上がった。

 

ケース2 某グループ元メンバー 脱退後に性的暴行疑惑

某グループを脱退した元メンバー(B)に脱退後、性的暴行を受けた、という匿名のアカウントの呟きが発見され、元メンバーは個人の公式のアカウントで声明を発表し疑惑を否定。しかし、証拠がなくても被害者を信じるべき、だとする一部の海外ファンの声からの批判により現在も炎上している。

 

ケース3 これは特定のグループというわけではなく多くのグループで髪型問題

しばしばKPOPでは個性的な髪の色や、髪型を施されるアイドルが多いが、特にアフリカ系の方がよくする髪型(コーンロウ)をすると「文化の盗用」とみなされて炎上する。

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どのケースも非常にセンシティブであり、結論を簡単に出すことが出来ない。と私は思う。ただ、どの国のファンであろうと、私が忘れてはいけないと思うのは、「当事者にしか当事者のことは分からない」という点である。

例えばケース1で、Aのことを「人種差別主義者」だと思うか、日本人の(特に原宿に行ったことがある人間)に聞いてみたら結果はどうなっただろうか。おそらくほとんどの人が、Aは差別主義者ではないと答えるだろう。なぜ私たちがそう思うか。それは、実際に日本の一部繁華街で、「悪質な客引き」が横行していることを我々がすでに知っているからである。これはある意味では、その土地にしかない「文化的コンテクスト」でもある。

あるいは、ケース3の場合はどうだろう。文化の盗用というのは、「他の人種民族の文化を他社が表層的に模倣すること」を指すそうで、歴史的にアフリカ系の人々の髪型やファッション等を他の民族(主に欧州系など)が真似することについてアメリカでは批判が絶えなかった。そう言った考え方に対してあまり無頓着である可能性が高いアジア圏の国からすると、この批判は驚くべきことのように感じる。けれど、今後もグローバルな人気を維持したいと事務所が考えるのであれば、批判される可能性をあらかじめ想定できる範囲内で取り除いておくのは、私個人としては賛成である。(そもそも髪型などをアイドル自身の意思で決めているのかはグレーゾーンではあるが)

こういったことに対して差別意識があって行うアイドルはおそらく皆無であろうし、「悪いことをしたわけじゃないのに推しが謝らなくてはいけない」という事実にもやっとするファンも日本人なら多いとは思う。しかし、欧米のファンが日本の文化を理解しがたいように、彼らのその文化的考えもこちらが理解しようとしても正直なかなか難しい部分だろう。したがって、あまりにも苦痛でない範囲であればある程度海外ファンダムの声に配慮して誤解を避ける努力をした方がいいと私は思った。一方で海外のファンダムも、当事者である(この場合ならアフリカ系の方)ファンがどう思うかが重要であり、関係のない人種があれこれと口出しするのも、またお門違いではないかなと思う。

 

そして最後にケース2については、人種差別というよりは、フェミニズム、あるいは性的暴行というセンシティブなトピックゆえの炎上と考えることが出来る。しかし、私は正直、Bが声明を発表した後にも、脅迫めいた文章を送りつけたり、信憑性の低い噂(他のメンバーをグループにいた時にいじめていたとか、暴行していたといった話)を作り出してまで、Bを批判するのは、まさに「ポリティカルコレクトネスの過激化、いきすぎた正義」だと感じた。海外の一部ファンは過激化し、snsでBの過去のトレカを燃やしたり切り刻むような投稿も行い、結果としてBは個人のSNSを削除するに至ってしまった。

私が言いたいのは、どんな事象だろうと、「真実は当事者にしかわからない」のだということである。そして、当事者でもない人間が、個人に対して執拗な攻撃を行うのは身もふたもない話で、ただの「誹謗中傷」に過ぎないと思う。確証のもてないことについて、事実であるかのような個人攻撃を行うことは、自分が差別主義的な加害者になるのと、変わらないのではないか。ファンダムの愛は、人間であるアイドルたちを傷つけるために存在しているのではない。誹謗中傷をしたところでBはもちろん、グループで活動を続けているメンバーたちが喜ぶとは到底思えないということまで、考えを巡らせる必要があると私は思う。脱退の理由が分からないから、理由を探してしまう気持ちはわかるし、私だって考えたりもした。けれどそれを憶測で決めつけていいという理由にはならない。

 

事務所やタレントだけではなく、応援するファンダム側も、節度と民度を保ち、流れてくる情報に対して鵜呑みにするのではなく、冷静に応援し彼らの幸せを願ってほしいと、いちゆるオタクは思ったのでした。まる。